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漂泊の欠片

今週末は展覧会のオープニングのため上京。
今回展示するドイツで描いた絵の源にあるものは故郷の自然であり風土である。
しかし僕の絵の多くは伊賀の外に出て行く。


 伊賀は、古来、隠し国と言われる。
 たかが四六〇方キロにすぎぬ小盆地を、山城、大和、伊勢、近江の四ヵ国の山がとりまき、七つの山越え道がわずかに外界に通じている。 
                             
                               司馬遼太郎『梟の城』より抜粋


昔、伊賀の人々は自分たちの土地が粘土質で農耕に向かなかったので、貧しい農業の傍ら生きるために傭兵となり各地へ出向いた。
忍者のはじまりである。
彼らは幼い頃から伊賀の山中で自然と向き合い、大いなる自然の力を探求し特別な術を身につけた。
その探求は武術から生物学、化学、気象学にまで及んだ。



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「観音像」観菩提寺(三重県伊賀市)photo:Yasutake Iwana


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「夕暮れの山」
油彩、部分 ©2012 Yasutake Iwana
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by yasutakeiwana | 2012-05-28 19:31 | 日記

河原の花

村の夜は冷たい。
畑の火、焼ける花。
蜂の羽音。小さな魚のお墓は青い空の下。
鱗と花びら。

村の駅に降りる峠の先に小さな墓地がある。
青い桜の木の根元に積まれた灰と河原に降りる梯子。
川辺には一面に紅色の花の群れが咲いて生温い雨に揺れている。
肉は土に土は種に種は芽に。
古い村人たちが笑っているようだった。

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「紅色の花のスケッチ」
花、鉛筆、アクリル、紙、 30×28cm
©2012 Yasutake Iwana
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by yasutakeiwana | 2012-05-23 19:27 | 絵画・詩

地元の文化の現状

来年地元で大きい個展のお話。
伊賀地方での展示は何年ぶりだろう。
とても楽しみ。いろいろアイディアが浮かんで来る。

「伊賀は偉大な才能をたくさん輩出しています」と地元の偉い人たちはおっしゃっているが
今の行政にその才能を受け止める甲斐性もなければささやかな発信をする情熱もない。
世界的に見ても独特の歴史や文化がある土地なのに「忍者」と「芭蕉さん」だけの観光地にしているのはもったいない。そして新しい才能は流出する。
伊賀を離れて長年苦労して名を残してきた芸術家たちの魂も作品も何も報われない。
それがドイツから帰って来て直に感じた悲しい現実です。

だから僕がこれから頑張らないといけない。
ヨーロッパで出会ったすごいものに負けない表現を地方で創造していかないといけない。
世界の中心がなくなった時代ならば、どこにいても独自の芸術を生み出していける。
それをずっとずっと信じて。
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by yasutakeiwana | 2012-05-21 23:48 | 芸術

脈々

5月15日
雨。
昼前に伊賀を出て芦屋に向かう。
芦屋市立美術博物館で開催中の吉原治良展を見る。
吉原治良(1905-1972)は早熟な画家だったが、あるときパリから帰国した藤田嗣治に「君の絵は人の影響がありすぎる」と酷評された。のちに「具体」という前衛芸術家集団を作り上げたが、若い弟子たちに言い続けた言葉は「人の真似をするな」だった。
多くの作品に題名はなくオリジナリティの絶対的な強度を信じ続けた。

展覧会を見終えるとそのまま宝塚へ。
この家の主だった画家は、伊賀の小さな村で絵を描いていた16才の僕に「芸術家の姿」を教えてくれた。彼は29才のときに画家を目指して伊賀から神戸に出てきて芦屋市展で吉原治良にその才能を発見された。彼の口癖も「人のやらんことをやれ」だった。2年ほど前にドイツから電話をかけると「アイディアはいっぱいある」「絵描きは家にいてもできる仕事」と言っていた。
最期まで現役の画家だった。

奥さんに夕食をご馳走していただきそのまま美術館の方と家に泊めていただいた。
3人で夜明けまで話は絶えなかった。
彼はもうここにいないが、彼の残したたくさんの絵と精神は消えることがない。


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by yasutakeiwana | 2012-05-18 00:16 | 日記

朱色の星

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「鳥と花のスケッチ」
インク、アクリル、紙
©2012 Yasutake Iwana


「朱色の星」

もう二度と帰って来ないと思っていた鳥が帰って来た。
土の花が咲いて、大粒の雨が田畑に垂れた。
その花のかたちは、
いつの日か北の山の彼方をかすめた朱色の星のようだった。
見えない老婆が山へ入った。
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by yasutakeiwana | 2012-05-11 13:19 | 絵画・詩

伊賀に帰る

5月2日の晩に伊賀に帰って来た。
湿っぽい空気と点々とした集落の灯り。
夜は虫と蛙の鳴き声だけが聞こえた。
中学の頃から使っている部屋は昔の絵とドイツで描いた絵でごちゃごちゃ。

翌朝は村の古寺と神社にお参り。久しぶりに歩く道。
青い草の匂いがして、後ろの北山はあたたかい顔だった。
ここは何もないところだけど、僕にとって何よりも美しい場所だ。
ドイツで買って来たノートに早速絵を描き始める。
新しい生活がここでまたはじまる。


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実家のエビネ蘭がたくさん咲きました。
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by yasutakeiwana | 2012-05-04 20:53 | 日記

Auf Wiedersehen Deutschland

約2年間暮らしたドイツのデュッセルドルフを去る日が来た。
残された時間はとても少ない。
まだ何を振り返ったらいいのかわからないけど、とてもゆっくりでとても凝縮された2年間だった気がする。この国で僕は何かとても大きなものを見たし、自分自身も大きくなろう思った。
たくさんの人に助けられてやさしくされたし、違う世界の壁に苦しむことも多かった。
本当に素敵な時間だった。

この街で絵を描いてたくさんの人に出会った。
だけどさよならもあるのだ。今まで本当にありがとう。
Vielen Dank und Auf Wiedersehen!
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by yasutakeiwana | 2012-05-01 19:32