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雨あがり。ケモノの匂い

雨あがりの川へ行った。
山から泥や木が流れてゴォゴォと森の声が里に響いた
雨あがりの土手を転げた
掌に黒い血が滲んで青臭い葉が沸いた
暗い水たまりで獣の子が哭いている
ひどく獣の匂いがした、何も食べなかった
村の男が2人やって来て
獣の子を山に連れて行った
僕は遠くの山に向かった
「彼ハイイ奴ダカラヤサシサヲアゲテ」
雨あがりの花の匂いがした


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「赤い花とケモノ」
2011 Oil on Canvas
30×30cm



9月上旬に日本各地を襲った台風12号は、奈良県でも人命を失うほどの大きな被害を残したと聞きました。犠牲になられた方々のご冥福と1日も早い復興を祈ります。そして「HANARART」が芸術のひとつの価値である「再生」と「鎮魂」の祈りを込めた芸術祭となることを願います。
2011年秋、デュッセルドルフにて  

岩名泰岳
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by yasutakeiwana | 2011-09-29 17:20

山の詩

アトリエに積まれた古いスケッチブックをめくると「山は古い父で山は古い母」と書いてあった。
僕の故郷の伊賀地方は四方を山々に囲まれた小さな里で僕の名前にも山があった。
いつからか祖先たちと同じように村の小さな山に向かい、山の内にある森で絵を描くようになった。最近、ドイツの詩人カール・ブッセ(1872-1918)の「山のあなた(原題:Über den Bergen)」という詩を見つけた。こんな詩である。



山のあなた

             カール・ブッセ/上田敏訳

山のあなたの空遠く
「幸」住むと人のいふ。
噫、われひとと尋とめゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸」住むと人のいふ。



Über den Bergen
                Karl Busse

Über den Bergen weit zu wandern      
Sagen die Leute, wohnt das Glück.      
Ach, und ich ging im Schwarme der andern, 
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen weti weti drüben,
Sagen die Leute, wohnt das Glück.
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by yasutakeiwana | 2011-09-20 07:51

見えない〈声〉

久しぶりにケルンの美術館に行った。
やっぱりルネサンス以前の絵画は何度観てもドキドキする。
小さな板に描かれた紺色の星空や深緑の草むら、祈る人々の素朴な表情と赤や黄色の服が小宇宙のような輝きを放っていて、名もない修道士や職人たちの信仰の深さが何百年経っても胸を打つ。

そういえば、先日ドイツで展示した僕の作品についてある作家さんが送ってくれた言葉「中世の絵画のように、可視的な世界を否定して観念(神の声)を図示していきながら、より生身の身体感覚を揺さぶる絵の具の質感によって表現されている」


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作者不詳、Wallraf-Richartz-Museum,Köln


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岩名泰岳
Pen,Watercolor,Charcoal on Paper
30×29cm 2011
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by yasutakeiwana | 2011-09-16 21:19

山にゆく人

空が赤みを帯びて煙りはじめた
長い峠を抜けると道が二手に分かれている
ひとつは村につづく道
もうひとつは山へつづく道だった

山に行くだれかが言った
わたしはもう帰って来ないけど
あなたはあなたのままでいて

さよならの花が揺れていた


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「夕暮れの花」
Oil on Canvas
30×30cm 2011
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by yasutakeiwana | 2011-09-12 18:10

8月のメモ

「365歩のマーチ」を歌いながら歩く夜中のドイツ。

土や獣の匂いとやさしい花の匂いが一緒になった絵になってほしい。

自分は何の技術も持っていないので毎日描き続けないと本当にダメになってしまう気がする。地下鉄の中でちょっと落書きするのとしないのとでは全然違う。

中学の頃、はじめ詩や物語を書いていてそこから絵を描くようになった。消えてゆく村のこころを下手な言葉や形に託そうとしていた。

伊賀でもドイツでも結局やっていることは今も昔も変わらない気がする。問題は死ぬまで変わらないことをやり続けられるかだ。

蜂の巣とケダモノ。

涙みたいな花が絵になった。

雨。筆を洗ってビール飲みながらフランス映画。

何かをひとりで作り出すときそこにあるのは「悲しさ」だったりする。

素朴な絵を描きたいし素朴な言葉を話したい。そして素朴に生きたいと思う。

掌にすくった冷たい水に星の粒が揺れていた。

夜中のドイツのアトリエで聴く中学で習った歌。「100年前も100年後も私がいないことでは同じ..」

今日、夢に出て来た鹿は話ができて、僕に絵のことを教えてくれた。

来月デュッセルで展示する絵と10月に日本で展示する絵は全然違うんだけど、全く違和感なく制作がすすむ。繋がってるものがあれば絵柄は関係ないんだな。

ここ数日異常に絵が描けると思ったらほとんどアトリエを出ていなかった。余計なものがなくていい時間。

夜の隅で生乾きのキャンバスを撫でた。掌の跡がかすかに画面に残った。

住処のある旅人になりたかったりする。冬の来る前に南へ旅立ち、春の訪れとともに村に帰って来る..みたいな。

街も人も一定のリズムで毎日回っていて、そこで僕は遠くの星からやって来た小さな人になったような気持ちで悲しくていっぱいになる。

写真の花は遠い思い出のようで切ない。絵の花はどこにもない花だけど枯れない。

下手でもいいからもっと響くものを作っていかないとダメになるだろうな。自分の才能なんて信じなくてもいい。自分の「血」を信じていかないと。

古い切り株に腰掛けて〈生まれて死んで生まれて〉と歌いつづける森の人。

いつもこの時期になると「仏さんが帰って来る」と祖母が言っていた。

絵は自分より小さすぎず大きすぎずがいい。カッコつけすぎた絵は人が誉めてくれても全然嬉しくない。

ドイツに帰って来た。パリに比べるとデュッセルドルフはドルフ(村)だな。でもそんな街が好き。

魚の絵を白く塗って花を描いた。

大事なのは血の通った絵であること。それが難しい。

山や村は僕の気持ちをわかってくれるのだろうか。

Non, je ne regrette rien(決して後悔してない)

世界を受け止める言葉というのがどこにあるのかわからない。だから草も星も眠るように揺れている。

こころの絵がささやかで一番美しいと願った。泣かなくていい。

微力でも下手でもいろんなことを変えていかないといけないわけで、まず手紙を書く。

いろんな人がやって来て去って行く。来週は展示だ。絵を描こう。

くらやみに芽が吹いた。森のひかりが揺れていた。

絵のなくなったアトリエにぽつんといる夜は何だか悲しい。絵はどこにでもいけるけど僕はここにしかいない。だからいろんな気持ちを託して描くんだ。
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by yasutakeiwana | 2011-09-09 20:11

土と赤い花

われの父母は死んでもはや土に化った。
われも、生きながら土になれ。
土になれば、亡き父母の世界と同位、
悲しゅうなるはずもない。

『梟の城』司馬遼太郎


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岩名泰岳
「土と赤い花」
Earth and Red flower
Oil on Canvas 50×40cm 2011
SANAGI FINE ARTS
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by yasutakeiwana | 2011-09-07 17:00

展覧会が終わって

展覧会も無事終了。
ドイツに来てから1番いい展示になったんじゃないかな。
絵や言葉はひとりで作らないといけないけど展示はひとりじゃできない。
今回の企画者の増山さんに本当に感謝。

自分の仕事って粗野なものだと思うんだけど、他の会場で展示してるヨーロッパのアーティストの作品や展示と比べたらやっぱり繊細なんだろうな。誰かに言われたけど絵は荒いけど精神が繊細な感じ。
だけどそういう感覚や自然観、歴史観がドイツ人のオーディエンスに説明なしで伝わっているかというとそうでもない気する。。西欧の現代アートのルールにハマった凡庸なものは作りたくないけど世界と戦うにはまだまだ工夫がいるはずだ。

写真は僕の絵を解説しているガイドのおじさん。

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by yasutakeiwana | 2011-09-05 19:06

展覧会のご案内「Kunstpunkte 2011」

デュッセルドルフにて開催される「Kunstpunkte 2011」に出品いたします。
ご高覧のほどよろしくお願いいたします。
岩名泰岳

Herzliche Einladung zur Ausstellung 「Kunstpunkte 2011」
Ich würde mich sehr freuen,wenn Sie die Möglichkeit hätten,sich diese Ausstellung anzuschauen.
Mit freundlichen Grüßen
Yasutake Iwana


"Offene Ateliers in Düsseldorf Kunstpunkte 2011"
Soya Arakawa, Yasutake Iwana und HIROYUKI MASUYAMA
03.09.2011 Samstag 14:00 - 20:00
04.09.2011 Sonntag 12:00 - 18:00

Kunst im Hafen e.V.
Reisholzer Werftstrasse 77
40589 Düsseldorf
www.kunstpunkte.de

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by yasutakeiwana | 2011-09-04 18:00

家を出た絵たち

2011.8.31

週末デュッセルドルフで開かれる「Kunstpunkte2011」に展示する作品を会場になる増山さんのアトリエに運ぶ。大きい絵は僕が担いで地下鉄で2往復。小品たちは増山さんが車で僕のアトリエまで取りに来てくれた。
僕の絵は全体的に小さいので空間が物足りなくないか、とかいつもいろいろ考えてしまう。作品を持って来過ぎて自分のアトリエが空っぽになってしまった。。まぁそれくらいの気持ちがちょうどいい。明日から展示だ。


2011.9.1

昼過ぎから展示作業。
2時間ほどで大きい絵を全部壁に掛け終える。絵の内容も展示構成もドイツに来てから1番いい形になりそう。少し余裕ができたのでドローイングはいつもと少し違う展示にすることにした。増山さんがドローイング用の展示台を作ってくれた。自分ひとりだとこういうことはなかなかできないので、今回増山さんと一緒に仕事ができて本当にいろいろ勉強させてもらっている。
休憩のコーヒとチーズケーキが何とも美味しかった。
明日は展示仕上げ!どんな展覧会になるかな。


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by yasutakeiwana | 2011-09-02 17:18