カテゴリ:絵画・詩( 23 )

墓場の桜

山間の墓場に桜の花が咲いた。
村にも春がきた。山の鳥が空まで泣いている。

峠の老婆が言う「私はあなたたちの血の流れを、ずっと昔から知っている」
血の流れが、節くれ立った粗い画肌を作ってゆく。
深紅の水に白い砂粒が染まってゆく。

里では蜜の木が溢れ出して、森の黄金が高く笑った。





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「森の黄金のスケッチ」
2014年 ペン、水彩、原稿用紙
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by yasutakeiwana | 2014-04-04 11:32 | 絵画・詩

「もうすぐお祭りもあるしね、山から春も来るわ」

この絵、この花みてごらん、
わしらは墓場からやって来た。

アルチュール・ランボー『渇きの喜劇』
(堀口大學訳)




木の実は暗い夜空へ落ちてゆく。
あぜ道を行く農夫の涙も冷たい水辺に落ちてゆく。
名前を与えられなかった花や魚は春まで生きられない。

閉まったままの村の資料館。
壁に貼られた集落の歴史は10年前で止まっている。
誰かに寄贈された緑の軍服のコートが点々と虫に喰われていた。



「私たちはこのまま転げ落ちてゆくだけなのかしら?」

「だってあなたはずっとここにいるだけ」
「あなたは何もしていない」

「悪いのはすべて私?だって何もすることがないじゃない」
「ここには何もないのよ。遠くの街の人たちは、誰も私たちのことを知らないわ」

「あなたの場所には、あなたの場所の美しさがある」
「小さな魚の鱗も白い花びらも、暗い夜星の下で光っている」



「もうすぐお祭りもあるしね、山から春も来るわ」





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「蜜ノ木」
2013年、油彩、キャンバス
45×38cm
個人蔵
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by yasutakeiwana | 2014-01-21 17:08 | 絵画・詩

蜜の木のメモ 2013年11月

冬枯れが日に日に強くなっていた。
シャッターの閉まった駅舎から汽車に乗る。
汽車は進みはじめて少ししてから大きな汽笛を鳴らして止まった。
人をひきかけたのだ。
旧道から山に向かう野道が踏切もなく交差している。
車内では「妨害だ。謝れ。」と街の方からやって来た観光客たちが怒鳴っている。
小さな人影は背中を丸めて紅い森の方に消えるのだった。


「若者たちが村に活気を取り戻して幸せ」とはならない。
衰退していくか世俗化していくだけの地方に残された若者たちの青白い瞳。
「彼らが村を変えてくれるかも」という集落の小さな希望になりかけていた若者たちの心が折れて消えていくことが、逆に最も深い村の絶望になってゆく。
すべての者が管理されていて、本当に大切なものすら与えられている。


それでも私たちは正義を貫くことができるか。





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by yasutakeiwana | 2013-11-28 18:41 | 絵画・詩

鹿と野ばら

山鳥は木の枝を渡る
重力を失った枝が跳ねて
乾いた葉がカラカラと音を立てた

猟師に追われた鹿の血が
峠の大池の深い緑を紅く染めた

(農夫たちは、その水際が夕日に染まっているのだと思った)

月日は荒れた草地に彼(鹿)の
白い骨だけを点々と残していた
夏には赤い野ばらの花が咲いて
もう村人が通ることのない山道を覆った




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by yasutakeiwana | 2013-11-20 11:36 | 絵画・詩

春には会うことができない人たち

木の実は空へ落ちてゆく
谷の方から死にも似た臭いが流れ込んで
観音山には田の火が共鳴する

子鹿の血が木葉の鏡になって
地蔵の後ろの白い花びらが星夜に反射した
祖先たちの顔が森の水辺にゆれている

多くの虫たちは春を迎えることができない
アトリエは森に通じていて温かい
出会うことのない春を待つ虫たちが眠っている




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「田ノ花」
2013 Oil on canvas
41×31cm
個人蔵
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by yasutakeiwana | 2013-11-09 18:52 | 絵画・詩

雨は鳥が逃げるのを知っている

草むしりをしていると無花果の樹に出会った。
一本の枝が重く茂って、地に触れている。
土を浴びた青い実が鳴いている。
甘い匂いに蝶や蟻が暗い空に円を描いた。

雨は鳥が逃げるのを知っている。
山から流れてくる枝や木の葉が道を作った。
雨粒が絵を濡らした。
嵐の後の土手に紅色の花が点々と咲いた。

古い山津波を知る村の老人が言う。
「あの時は、十日も雨が降った。雷の震えで水の山が崩れた」



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森の花
Flowers in the forest
2013
Oil on Canvas 41×31.8cm
©Yasutake Iwana2013
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by yasutakeiwana | 2013-09-17 16:39 | 絵画・詩

村人たちは黄金の森に詩を描く。

5月の初め、
アトリエに着くと、
小学校の同級生たちが集まって整備をしてくれていた。

すべてが嘘になってしまった時代に、
やさしい、土一揆のような風情。


湿地の硝子がきらめいて
蜜の木はいつまでも風にゆれていた。




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by yasutakeiwana | 2013-05-07 20:01 | 絵画・詩

人は、土に縛られて泣くのか。

春の土手、つくし、ふきのとう、桃の花、夏蜜柑。
紅い顔の村人たちが私に後ろ指を指している。

観音の森の暗いかがやきを、田に流れる春の水を、
〈森〉と〈里〉の境界を横断する透明な旅人。

生温い雨の、ずぶ濡れの獣の爪が土に哭いている。



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「古い田のスケッチ」
水彩、紙 ©Yasutake Iwana 2013 
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by yasutakeiwana | 2013-04-13 23:29 | 絵画・詩

祭りの向こうの水の底

山の夕暮れ、峠の中程。
もう会うことのない人に出会ったとき、貧しい村人たちは農作物で鬼を作った。
それが冬の祭りになった。

そして、人は土に縛られて泣くのか。


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by yasutakeiwana | 2013-03-03 11:13 | 絵画・詩

観音の森のスケッチ(橙色)

閼伽井の深い水。
冬の森から見える星の粒が白い花の輪郭を描いた。
木も死ぬ、黒いの鳥の鳴き声、獣捕りの鉄砲の音。
民家の煙と一緒に流れ込む古い呪文。

橙の森の内はとてもあたたかい。


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「観音の森のスケッチ」2012〜2013年 岩名泰岳
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by yasutakeiwana | 2013-02-27 20:45 | 絵画・詩